結論 #
条件付きで本当です。20gは「最低ここは確保したい」という下限の目安であり、「これを超えたら無駄になる」という上限ではありません。上限として広まったのが誤解の原因です。1回の量を増やしても捨てられる線はなく、1gあたりの効き目が落ちていくだけです。
元の実験は何を調べていたか #
2009年の実験では、若い男性がレジスタンストレーニングの後に卵タンパク質を0g・5g・10g・20g・40g摂り、筋タンパク質合成の反応を比べました。20gでほぼ最大に達し、40gでは上乗せがわずかだったため、「1回20gで頭打ち」と要約されました。
ここで見落とされがちなのが実験の条件です。
| 条件 | 実験の設定 |
|---|---|
| 対象 | 若年男性 |
| 運動 | 脚に限定したトレーニング |
| タンパク質 | 卵タンパク質 |
| 観察時間 | 摂取後4時間 |
条件を変えた研究では結果が変わりました。全身を鍛えた後では40gが20gを約20%上回りました。「摂取後4時間だけを見て、脚だけを鍛えた場合」という条件では20gで頭打ちだった、というのが正確な読み方です。

多く摂った分は捨てられるのか #
3つの言葉を分けると、何が増えて何が鈍るのかが見えます。
| 言葉 | 意味 | 1回の量を増やすと |
|---|---|---|
| 摂取量 | 口から入れた量 | 制限なく増やせる |
| 吸収量 | 腸から体内に取り込まれた量 | ほぼ全量が入る。ただし時間はかかる |
| 合成に使われる量 | 体のタンパク質を作るのに回った量 | 増えるが、増え方は鈍る |
ミルクタンパク質25gと100gを比べた試験では、100gの大部分が吸収され、筋タンパク質合成は12時間以上にわたって高い水準が続きました。25gが4〜5時間で安静時に戻ったのとは対照的です。エネルギーとして燃やされたのは増やした分の15%未満でした。「一定量を超えたら捨てられる」という誤解が広まったのは、古い実験が摂取後4時間までしか測っていなかったためです。

ただし、4倍飲んでも4倍にはなりません。100gの筋タンパク質合成は25gに比べて、最初の4時間で約20%、その後の8時間で約40%高いだけでした。
同じ総量なら、分けたほうが結果は上です。ホエイ80gを12時間で摂る試験では、3時間おき4回×20gが6時間おき2回×40gを上回りました。100gの結果を「まとめて摂れば配分は気にしなくてよい」と読むのは行き過ぎだと、専門誌でも注意されています。
つまり #
20gは「下回ると足りない」ライン。飲みすぎた分が捨てられる心配はいりませんが、1回にまとめるほど1gあたりの効き目は落ちます。上限を気にして飲む量を削るより、1日の総量を確保したうえで3〜4回に分けるほうが、判断としては正しい方向です。
出典
- Moore DR, et al. (2009) Ingested protein dose response of muscle and albumin protein synthesis after resistance exercise in young men. American Journal of Clinical Nutrition, 89(1), 161–168.(摂取後4時間を観察した用量反応)
- Macnaughton LS, et al. (2016) Physiological Reports, 4(15), e12893.(全身トレーニング後の20g vs 40g)
- Trommelen J, et al. (2023) The anabolic response to protein ingestion during recovery from exercise has no upper limit in magnitude and duration in vivo in humans. Cell Reports Medicine, 4(12), 101324.(25gと100gの比較。12時間以上続く合成反応、筋原線維合成は0〜4時間で約20%・4〜12時間で約40%高い、酸化は増分の15%未満)
- Areta JL, et al. (2013) Timing and distribution of protein ingestion during prolonged recovery from resistance exercise alters myofibrillar protein synthesis. Journal of Physiology, 591(9), 2319–2331.(ホエイ80gを8回/4回/2回に分けた比較、3時間おき×4回が最良)
- Witard OC, Mettler S. (2024) The Anabolic Response to Protein Ingestion During Recovery From Exercise Has No Upper Limit in Magnitude and Duration In Vivo in Humans: A Commentary. International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism, 34(5), 322–324.(結果の実務的な読み方への注意)