結論 #

1回の反応を決めるのは、原料の速さより飲み方です。同じホエイ25gでも、一度に飲んだほうが200分かけてちびちび飲むより筋タンパク質合成は高くなりました。原料の速さの差が数か月後の筋量に残るかは、分かっていません。

何を比べた実験か #

ホエイとカゼインを比べても、ロイシン量も組成も違うので速さの効果だけは取り出せません。立ち上がりの鋭さだけを変えた実験がこれです。

同じホエイ25gを、一度に飲む場合と、2.5gずつ20分おきに10回に分けて飲む場合で比べます。血中必須アミノ酸の総量(曲線下面積)は同じで、違うのは立ち上がりの鋭さだけ。筋原線維タンパク質合成は一気に飲んだ側が上回りました(運動後1〜3時間で95%増と42%増、3〜5時間で193%増と121%増)。

ここで比べられているのは、1回分を一度に入れるか、200分かけて少しずつ入れるかです。食事と一緒に飲んで胃の通過が遅くなる程度の差とは、規模が違います。

数時間の差は、数か月後に残るのか #

こうした急性の差が長期の結果に表れるとは限りません。若い男性を対象にした試験では、運動直後の筋タンパク質合成が高かった人ほど16週間後に筋肉が増えた、という関係が見られませんでした。立ち上がりの鋭さを何か月も変え続けた試験もありません。

原料どうしの比較は、急性の測定でも条件で分かれます。運動後に比べた試験では加水分解ホエイがカゼインを上回りましたが、就寝前にカゼイン45gとホエイ45gを比べた試験では、一晩の筋タンパク質合成に差がありませんでした。「夜は遅いカゼインが向く」という話も、この結果とは合いません。

比べたもの 数時間の反応 数か月後の筋量
1回分をまとめて飲むか、20分おきに10回に分けるか まとめて飲むほうが高い 未検証
ホエイかカゼインか 条件により変動 明確な結論なし

つまり #

1回分は分けずにまとめて飲む。ここは効きます。原料が速いか遅いかで長期の筋量が変わるという根拠も、夜は遅いほうが良いという根拠も、今のところありません。

出典
  1. West DWD, et al. (2011) Rapid aminoacidemia enhances myofibrillar protein synthesis and anabolic intramuscular signaling responses after resistance exercise. American Journal of Clinical Nutrition, 94(3), 795–803.(25gのホエイを一括と分割で比較。必須アミノ酸の曲線下面積をそろえた設計)
  2. Mitchell CJ, et al. (2014) Acute post-exercise myofibrillar protein synthesis is not correlated with resistance training-induced muscle hypertrophy in young men. PLoS ONE, 9(2), e89431.(運動直後の合成反応と16週間後の筋肥大に相関なし)
  3. Tang JE, et al. (2009) Ingestion of whey hydrolysate, casein, or soy protein isolate: effects on mixed muscle protein synthesis at rest and following resistance exercise in young men. Journal of Applied Physiology, 107(3), 987–992.(製品間の急性比較。速さ以外の条件もそろっていない点に注意)
  4. Trommelen J, et al. (2023) Pre-sleep Protein Ingestion Increases Mitochondrial Protein Synthesis Rates During Overnight Recovery from Endurance Exercise: A Randomized Controlled Trial. Sports Medicine, 53(7), 1445–1455.(36人、就寝前のカゼイン45gとホエイ45gに差なし)