結論 #

筋トレによる筋タンパク質合成の増加には、mTORの働きが要ります。この経路を薬で止めると、運動をしても合成が上がりませんでした。ただし、経路の活性が高いほど筋量が増えるとは確認されていません。

止めてみた実験 #

役割を確かめる最も直接的な方法は、働かないようにしてみることです。健康な男性を対象に、ラパマイシンという薬でmTORの働きを抑えた状態でレジスタンス運動を行わせた試験があります。

薬を飲まなかった群では、運動後に筋タンパク質合成が上がりました。薬を飲んだ群では、同じ運動をしても上がりませんでした。筋トレの効果がこの経路を通っていることを示す結果です。

動物実験では逆方向も示されています。この経路を人為的に強めると筋肉が肥大し、使わずにいると起きる萎縮も防げました。

一方で、その場の反応の大きさから長期の結果を予測できるとは限りません。mTORを通じて高まる運動直後の筋タンパク質合成でさえ、その高さが16週間後の筋肥大と相関しなかったという報告があります。その場の指標と数か月後の結果は、単純には結びつきません。

サプリメントの広告には「mTORを活性化する」と書かれていることがありますが、どれだけ強く活性化させれば筋肉がどれだけ増えるのかは分かっていません。

つまり #

mTORは筋肥大に必要な経路です。ただし「より強く活性化すればより増える」という関係までは確認されていません。

出典
  1. Drummond MJ, et al. (2009) Rapamycin administration in humans blocks the contraction-induced increase in skeletal muscle protein synthesis. Journal of Physiology, 587(7), 1535–1546.
  2. Bodine SC, et al. (2001) Akt/mTOR pathway is a crucial regulator of skeletal muscle hypertrophy and can prevent muscle atrophy in vivo. Nature Cell Biology, 3(11), 1014–1019.(動物実験)
  3. Mitchell CJ, et al. (2014) Acute post-exercise myofibrillar protein synthesis is not correlated with resistance training-induced muscle hypertrophy in young men. PLoS ONE, 9(2), e89431.