結論 #
窒素出納とは、体に入った窒素と出ていった窒素の差です。タンパク質の必要量を決める方法として長く使われてきましたが、その必要量を低めに見積もる傾向が指摘されています。
引き算で必要量を決める方法 #
タンパク質には窒素が含まれていて、他の栄養素には含まれていません。そこで、食事から入った窒素と、尿・便・皮膚から出た窒素を測り、その差を見ます。差がゼロなら体のタンパク質が増減していない、という考え方です。
各国の食事摂取基準にある推奨量は、主にこの方法で求められてきました。多数の窒素出納研究をまとめた解析から、成人の維持必要量として体重1kgあたり0.66g/日という平均値が示され、ここに個人差を加えた値が推奨量になっています。
弱点は測定の難しさです。摂取した窒素は測りやすい一方、皮膚や毛髪から失われる分は測りにくく、見落とされやすい。入る側だけが正確に測れるので、出納が実際よりプラスに出ます。その結果、必要量が低く見積もられると指摘されています。
別の方法も使われています。アミノ酸の一部が燃やされる量から必要量を求めるやり方で、指標アミノ酸酸化法と呼ばれます。この方法では、若い男性で体重1kgあたり0.93g/日と、窒素出納法より高い値が報告されました。
| 方法 | 若い成人男性の必要量の推定 |
|---|---|
| 窒素出納法 | 0.66g/kg/日(平均必要量) |
| 指標アミノ酸酸化法 | 0.93g/kg/日(平均必要量) |
つまり #
窒素出納は「増えも減りもしない量」を求める方法で、筋肉を増やすための量とは別です。推奨量が指標アミノ酸酸化法の値より低いのは、この測り方の性質によるところが大きいといえます。
出典
- Rand WM, Pellett PL, Young VR. (2003) Meta-analysis of nitrogen balance studies for estimating protein requirements in healthy adults. American Journal of Clinical Nutrition, 77(1), 109–127.
- Humayun MA, et al. (2007) Reevaluation of the protein requirement in young men with the indicator amino acid oxidation technique. American Journal of Clinical Nutrition, 86(4), 995–1002.
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(推定平均必要量の算定根拠)