結論 #
細胞の中で「今は作ってよい時期か」を判断している酵素です。アミノ酸と運動の刺激で活性化し、タンパク質を組み立てる工程を始めさせます。
材料と余力を確かめる係 #
細胞は常にタンパク質を作れるわけではありません。材料があるか、エネルギーに余裕があるか、作る必要があるか。mTORはこうした条件を確かめて、組み立てを始めるかどうかを決めます。
複数の信号が入力になります。
| 入ってくる信号 | 意味 |
|---|---|
| アミノ酸(特にロイシン) | 材料がある |
| インスリン・成長因子 | 作るのを後押しする条件がある |
| 機械的な張力(筋トレ) | 作る必要がある |
| エネルギー不足 | 作るな、という逆向きの信号 |
活性化したmTORは、タンパク質の組み立てを始める側の分子を動かします。筋肥大にこの経路が欠かせないことは、動物で経路を強めた実験や、ヒトで薬を使って止めた実験から確かめられています。
名前の由来はラパマイシンという薬です。この薬が結合する標的として見つかったため、mechanistic target of rapamycin と呼ばれます。
つまり #
mTORは、タンパク質を作る工程のスイッチです。ロイシンが「信号」として働くと説明されるのは、このスイッチを入れる働きがあるためです。
出典
- Bodine SC, et al. (2001) Akt/mTOR pathway is a crucial regulator of skeletal muscle hypertrophy and can prevent muscle atrophy in vivo. Nature Cell Biology, 3(11), 1014–1019.(動物実験)
- Drummond MJ, et al. (2009) Rapamycin administration in humans blocks the contraction-induced increase in skeletal muscle protein synthesis. Journal of Physiology, 587(7), 1535–1546.
- Norton LE, Layman DK. (2006) Leucine regulates translation initiation of protein synthesis in skeletal muscle after exercise. The Journal of Nutrition, 136(2), 533S–537S.