結論 #
ロイシンは、タンパク質の材料であると同時に「合成を始めろ」という信号としても働く、特別な役割を持つ必須アミノ酸です。血中のロイシン濃度が一定の水準を超えると、筋タンパク質の合成が立ち上がります。
材料と信号は何が違うのか #
他のアミノ酸は基本的に材料として使われるだけですが、ロイシンはmTORC1と呼ばれる細胞内の経路を活性化し、タンパク質を作る工程そのものを開始させます。スイッチを押す役と、組み立てに使われる部品の役を兼ねている、と考えると分かりやすいでしょう。

このスイッチが入るには、1回の摂取である程度まとまった量が必要です。若い成人では1食あたり2〜3gが目安とされ、加齢とともに反応が鈍くなるため、高齢者ではより多くを要するとする報告があります。少量をこまめに摂るだけでは、この水準に届かないことがあります。
ロイシン比率が高いのはホエイです。タンパク質20〜25gを含むホエイ1杯であれば、この2〜3gという量をおおむね満たします。一方、ソイやカゼインはロイシン比率がやや低いため、同じ信号の強さを得るには、より多くのタンパク質量が必要になります。
つまり #
重要なのは1日の合計だけでなく、1回にロイシンが何g入るか。プロテイン1杯を「1回分」としてまとめて飲む形が合理的なのは、この閾値があるためです。
出典
- Norton LE, Layman DK. (2006) Leucine regulates translation initiation of protein synthesis in skeletal muscle after exercise. The Journal of Nutrition, 136(2), 533S–537S.
- 図版はEugène Delacroix「民衆を導く自由の女神」(1830年、パブリックドメイン/Wikimedia Commons)を加工したイメージです。
- Tang JE, et al. (2009) Ingestion of whey hydrolysate, casein, or soy protein isolate: effects on mixed muscle protein synthesis at rest and following resistance exercise in young men. Journal of Applied Physiology, 107(3), 987–992.(ホエイ・カゼイン・大豆のロイシン含有率と合成反応の比較)
- Breen L, Phillips SM. (2011) Skeletal muscle protein metabolism in the elderly: Interventions to counteract the 'anabolic resistance' of ageing. Nutrition & Metabolism, 8, 68.(加齢による反応低下)